メディア掲載

このページは、2008年ブレインワークス刊行の書籍「こんな会社で働きたい! IT産業の個性派企業15社」を、ブレインワークス様の許可を得て転載しています。

トップに立てる人材を育てる

ぶつかっても意見を言うことがクライアントのためになる

積極性を求めるプラス・アルファでは、新規雇用にあたっても単純に技術力があるだけではなく、前向きな発言が出来ることを重視している。クライアントにもきちんと疑問点を提示することで、自分が納得できるだけでなく、相手の真意を引き出すこともできるようになるからだ。

「たとえ間違っていてもいいのです。自分が持った疑問を、自分の言葉で相手にぶつけることができなければなりません。技術はその後ろ盾になりますが、最初に必要なのは発言するということなのです」と鵜飼氏は発言することの重要性を説く。

 ユーザー企業からの相談を受けたときに、相手の言うことをできるかぎり受け入れることが誠実だと考える人もいるだろう。しかし、それでは本当にユーザーのために役立つシステムにはならない。「お客様は、業務のことは良く知っていますが、システムに関してはすべてに自信を持っているわけではありません。極端なことをいえば、今度システム化しようと思っているんだよといわれたら、どうしてシステム化するんですか、と聞き返すのでもいいと思います」と鵜飼氏。疑問をぶつけることで互いに深く考えるきっかけになり、より良い製品の完成につながるという考えだ。

 質問をし、対話することでコミュニケーションレベルとともに知識のレベルも引き上げていくことができる。そして、正確に要望を読み取り、それに答えることで技術の向上もついてくるはずだ。そうした積極性と成長を鵜飼氏は若手に求めている。

 しかし、クライアント相手に強く出ることは難しいと考える人は少なくないだろう。しかも小さな開発会社ともなれば、だくだくとクライアントに振り回されているというケースも珍しくない。そうした考えに対して鵜飼氏は「クライアントと開発会社の関係はフラットでありたいと考えています。発注する側と受託する側という立場の違いはあっても、上下関係はないはずです。同じく、社内においても立場や役割の違いはあっても、人間的な上下関係はないと思っています」と語る。こうした考えから、鵜飼氏は「従業員」という言葉を嫌い、「社員」や「スタッフ」といった呼び方を心がけているという。

 もちろん、はっきりと疑問や意見を言うことで揉めたことがないわけではない。「お客様のなかには、言うことを聞いていればいいんだという方もいます。私自身、議論のなかで灰皿をぶつけられたこともあります。思い返せば、議論が白熱するあまりに私の言葉もきつくなっていたのでしょう。しかし、気を使えないほどに熱心に議論をすることが悪いとは思いません。そのお客様とも、最終的には力を合わせて仕事をすることができました。ですから、自分が間違っていないと思うならばしっかりと意見をぶつけてみてほしいのです。もし本当に失礼なことがあったら私がお詫びしますから、あまり心配せずにやってほしいですね」と鵜飼氏は思い切った発言をあくまでも勧めている。

 また、鵜飼氏は技術面だけではなく精神面や会話の力を磨くことを推奨している。他者と意見を戦わせる経験を多く持つことで、考えを口にすることに慣れ、適切な議論ができるようになるための訓練を日常的にする方法として、テレビや居酒屋の活用があげられた。「テレビの討論番組を見ながら、自分がそこに参加してみるのです。自分だったらどういうか、ああ言われたらどう返すか、とシミュレーションしてみると手軽な訓練になります。また、飲みにいったとき偶然に、近くに座った人と話をしてみるのもいいでしょう。仲間と楽しく飲むのもいいですが、自分の実にはなりません。二回に一回くらい、ひとりで飲みに行って近くの人と社会情勢などについて討論してみるのも楽しいものですよ」と語る鵜飼氏は、自身でも実践しているという。

出典「こんな会社で働きたい! IT産業の個性派企業15社」

編著 ブレインワークス
発行人 玉置哲也
発行所 株式会社カナリア書房
発行日 2009年 1月10日
ISBN 978-4-7782-0087-9